2016年9月 No.374 頑丈な歯に守られ、残った歯髄で日本人のルーツを探る
先日テレビを見ていると、3000年前の縄文人の人骨(福島県三貫地貝塚から出土)からの大臼歯から取り出したDNAを分析し現代人のDNA配列と比較することで、縄文人の独自性と日本列島人の成立過程が見えてきたと放送していました。
これまではこのような人の歴史を探る研究は、人骨や土器などを発掘し観察する考古学と古人類学の手法が用いられ、統計学などを駆使して進められてきました。今回は縄文人ゲノムの4%ほどを占める1億個の塩基配列データが得られたという事です。
以前から何回か抜去乳歯の歯髄から幹細胞を取り出し凍結保存し、進歩が目覚ましい再生医療で将来に備えようという歯髄細胞バンクのお話をしてきました。大橋小児歯科医院では現在3人が実施され凍結保存、管理しています。
歯髄は歯の硬い組織で頑丈に包まれている上、比較的原始的な組織なので他の組織に比べて保存状態がよく重宝されています。
今回、縄文人の歯をドリルで穴をあけ内部からDNAを抽出したという事ですが、1つの歯に含まれていたDNA配列の内訳は図の通りで縄文人由来と考えられるDNA配合物はほんの数%で、大部分は由来不明物質、感染した菌などでした。それにしても3000年もの間よくぞ腐らずに残っていたものです。-院長-