No.009　乳歯は永久歯の親！！

「あなたのお子さんには乳歯のムシ歯はＸ本あります。」というと、お母さんの中には、ハイそうですか、といった調子でたんたんとしておられるのに、乳歯の他に生えたての永久歯がすでにムシ歯になっていますよ！とお話すると、え！！それは大変、先生早くなおして下さい。とりあえず先に永久歯をお願いしますという方がたまにおられます。
乳歯はさておいて永久歯は一生使うのだから大切にしなければとお思いなのでしょう。永久歯を大切にしょうという考えは結構なのですが、乳歯と永久歯はお互いに独立していて乳歯の影響が全く永久歯にかからないとでも考えているのでしょうか。
乳歯は生まれて６～７ｶ月頃に生え始め、２歳半頃に全部生えそろいます。それから６歳頃までは乳歯だけの時期がありますが、６歳前頃より永久歯が生え始め、１０歳前後には乳歯は完全に脱落して永久歯だけになります。その間、永久
歯はその前に生えていた乳歯の根を吸収しながら、それに誘導されて本来の位置に生えるのです。ですから､(Ａ) 数年前までの乳歯ムシ歯の洪水の時期といわれた頃は、乳歯が永久歯に突き上げられて抜け落ちるのではなく、ムシ歯のため早い時期に脱落あるいは抜歯しなければならなかったので、永久歯列の不正咬合が本当に多かったものです。乳歯のムシ歯による歯並びの問題が全体を覆い隠していた時代です。しかし、最近では乳歯の早い時期の脱落が減ったので生れつきの顎や歯の大きさ、バランスなど本来その子が持って生まれた不正咬合が見え始めて来たのです。それまでは歯並びの問題どころではなかったのです。 (Ｂ) 永久歯のムシ歯はその歯が生え始めて数年以内が最もムシ歯になり易いのです。
１）歯が十分成熟してムシ歯に対する抵抗力を獲得するまでの間、あるいは
２）ムシ歯予防のためのブラッシングのテクニックが上達する以前、
３）口腔衛生のための習慣が身につくまでの間、その期間はまさに、永久歯と乳歯とが口の中で同居する混合歯列期と呼ばれる時期で、乳歯のムシ歯は永久歯のムシ歯に影響している事は、いろんな調査で明らかにされているのです。身に覚えのある不正咬合、永久歯のムシ歯を本当に減らすためには、乳歯のムシ歯を先ず処置し、予防する事から始めなければならないのです。