No.023 歯は噛むために!!
最近、噛めない子、噛まない子が増えているということが話題になっています。
私ども小児歯科医の間でも、虫歯の問題と同様、噛むことの話題がつきません。
先日、噛むことについての集まりがあり、出席しました。
その時の講演者の一人に子供の噛むこと、飲み込むことについて研究しておられる先生がいました。その先生がどうしてそんな研究を始めたのかといいますと、まず始めは、障害児の施設に、虫歯の検診や相談治療に出かけていたのですが、熱心な親、施設の先生などの苦労のかいあって何とか虫歯を食い止めることができたのです。
三度の食事を管理し、生活の時間などをコントロールできれば、虫歯予防なんてそれほど困難なことではないようです。実際、東京の乳児院で虫歯0地帯が、虫歯洪水の真最中の時代に報告されていたのですから。
ところが、虫歯の問題をクリアーしたとき障害児の親たちが次の課題を抱えていたのです。そうです、虫歯のないきれいな歯を獲得したものの、障害児にとっては、その歯を使って物を食べることができなかったのです。歯は何のために・・・となったのです。やはり歯は噛むために・・・。どうしたら普通の子供のように食べる(摂食)ことができるようになれるのか。こうして障害児のための摂食機能、回復訓練の研究が進められるようになったのです。しかし、障害児だけでなく、いわゆる正常児でさえ、最近では噛むことについていろいろな問題があるようです。 噛めない、噛まないという問題の中には、いま、述べてきたような①機能上の問題があります。これは正常児であれば おかあさんのオッパイに吸い付くことに始まり離乳へといろんな段階を一つ一つクリアーして獲得して行くもので問題があればその一つ前の段階に戻ってやり直しが必要です。最
近の問題はどちらかといえば②生活,行動の問題 の方が大きいようです。この間、ある保母さんから聞いたのですが、子供の食事時間をかなりすぎてスーパーに買い物に走るおかあさんを見かけたので聞いて見ると、せっかく作った夕食を子供が食べてくれないので子供が食べてくれるものを買いに来たということだったのです。いろんな事情があるのでしょうがこれではうまくしっかり噛んで食べる習慣はつきそうにもありません。子供は未熟です。子供の言いなりになってご自分の方針を通さなかったらどうなるでしょうか。食べない子の背景を調べたところによりますと、
1)手ぬきの食事、
2)甘いドリンク飲料の与え過ぎ、
3)子供の言いなり、
4)生活時間が不規則でおとなに振り回されている、
5)かまいすぎ、
6)子供と向かい合って楽しい食事時間が作れていない。
7)お菓子の与え過ぎ、
8)離乳食の失敗、
9)いつまでも哺乳瓶で牛乳を与えている、
10)テレビを見ながら食事をする。
などいろいろな問題があるようです。