No.025 乳前歯にすき間がない!!ある??
去年の8月号で”虫歯はないと思うのですが、子供の歯がペッタンコにすり減 っているし、歯と歯の間がすいてしまっているので異常ではないかしら”と私の 診療所へ来られた人の事を書きました。これが正常で使いこなされた乳歯の姿だ ったのですが、先日の新聞で、乳時期の顎の発達が悪いため、乳歯間のすき間が ほとんどない子供が最近急増。27年前と比べると、乳歯のすき間がない子供が 5倍以上(上顎の場合)にもなっていると、私たち小児歯科医のグループの徳永 先生が発表していました。乳前歯の歯と歯の間には4~5歳になると、顎の成長 とともにすき間ができ、それは将来、乳歯よりもずっとずっと大きい永久歯が生 えるために必要なのです。これを私たち歯科医は発育空隙と呼んでいるのです。 永久歯がうまく生えそろうかどうかを見分けるのに最初にチェックする事柄の 一つです。
徳永先生の発表によりますと、上顎の乳前歯には7mm、下顎では5mmのすき間 がなければ永久歯が生える場所が足りないのに、上顎については2.7人に1人、 下顎では1.8人に1人にすき間が全くなかったのです。そのために当然、永久 歯の前歯はきれいに生えそろう分けがありません。ところが27年前の調査では、 上顎で14人に1人、下顎で4人に1人だったのですから、スペース不足は時代 とともにかなり進んでいるようです。
この原因について徳永先生は1母乳を与える母親が減り、赤ちゃんが力いっぱ い吸うことで口や顎の筋肉を鍛える機会が少なくなったこと。2たとえ母乳を与 えても母親の栄養状態がよくなり、軽く吸うだけで母乳が出る。3離乳食の時期 が昔の子供に比べて早くなり、軟らかい離乳食を食べて「かむ」という機能をほ とんどせず、顎の発育が遅れている。4インスタント食品、冷凍食品などによる 「軟らか志向」の食生活が「かむ」を忘れさせ、唾液の分泌も減って、顎の機能 を次第に退化させているなどと説明しています。
乳児期は、母乳をしっかり与え、吸う力をつけさせ、離乳については、どうし て☆☆☆☆☆なのっ!のコーナーを参照して、そして、1歳ごろから、よくかん で食事をする習慣をつけてほしいものです。