No.031 期相談、早期予防
先日、6歳の女の子が初診として来院しました。お口の中を見ますと、乳歯が 数本ムシ歯の治療がされていて他にはムシ歯はなさそうです。
お母さんは、口の中の健康についてかなり熱心そうで、ムシ歯は無いと思いま すが、下の歯が上の歯よりも前に出ていて、受け口ですがどうしたものか、と心 配そうです。 それで、噛み合わせをよく診て見ますと、やはり下の前歯が上の 前歯に対して、滑るようにして、前の方へ噛み込んでいます。もう少し詳しく調 べて見ますと、前の永久歯が反対に噛み込む前に、乳歯の犬歯が当たってグッと 滑り込んでいます。そこで、下の顎を後ろに押し込むようにして噛み合わせると 前の歯は切端がカチンと当たります。乳犬歯を少し削って当たらないようにして、 もう一度後ろの方で噛み合わせると、前歯は下の方が上の歯よりも少し中へ入り ます。これで、この子の受け口(下顎前突)は治る事がほぼ確実になったのです。 しばらくの間、努力して下の顎を後ろに引いて噛み合わせていれば、自然と正常 に噛み合うようになるでしょう。
このように、ちょっとした噛み合わせの調整と、アドバイスで、もしも放置して いれば、ほぼ確実に下顎前突になっていたであろうケースでも、簡単に噛み合わ せを治す事も可能です。この場合でも、あと数年間もすれば、そう簡単には治ら なくなります。毎日毎日反対の噛み合わせが続き、それに合わせて、他の歯も噛 み合うようになると同時に、顎の関節もその状態で安定するようになるからです。
以前、この”くりあー”に、歯は息でも動く、というテーマで書いたことがあ りますが、あの固くて、ガッチリとしている歯並びも、人の口の中で、その周り の舌やホッペ、唇とともに、それと噛み合っているお互いの歯の力のバランスの 上に出来上がっているのです。逆に、異常と思われる噛み合わせも、それはそれ なりに力のバランスの上に成り立っているのです。そういう意味で、もし異常で はないかと思えば少しでも早いうちに正常な範囲に誘導してあげる必要があり ます。噛み合わせも、早期相談、早期治療、早期予防が大切な事がお分かりいた だけたらと思います。