先日5歳の男の子が、下の前歯がおかしいといって来院されました。下顎乳前 歯の内側の歯肉を突き破って尖った白い歯のようなものが見えると心配そうで す。・・・ これはよくあるケースであまり心配する必要がないようです。

さて、最近の調査では、6歳大臼歯と言われる、下顎で一番奥の乳歯のその奥 に生えてくる第1大臼歯よりも、一番前の下顎中切歯の方が先に生える子の方が 多いようです。それも、昔は6歳頃に永久歯が生え始めるといわれていたのです が、最近では子供の成長が早く6歳以前に既に生え始める子が多いのです。 ところで、中切歯は、成長点が3つあって、それが各々成長し、愈合して一つの ものとなって歯の形を作るのだといわれています。ですから生えたてのまっさら の中切歯は、その先端に3つの山があり、形はまるでチューリップに似ています。 白いチューリッブちゃんが下の前歯として4本並ぶのです。ところでお母さんの 下の前歯には山がありませんネ!それは毎日毎日の生活の中で噛む事によって 摺減って平らになるからです。

この成長点の愈合が実はくせもので、3つの成長点がまんべんなく成長すれば 湾曲のあまりきつくないシャベル状のきれいな歯の形になります。しかし、真ん 中が両脇よりも少し成長が悪ければ、両脇が分厚く湾曲の強いシャベル状になり ます。それが極端になれば、真ん中がめり込んで穴があき、その中に物が溜まり、 初めから虫歯ということになります。

また、下顎中切歯は乳歯の内ら側から乳歯の根を吸収しながら生えてくるので す。その様子があたかもエスカレーターのステップが手前からせり上がって来る のに似ているので、エスカレーター式交換とも言われているのです。乳歯の少し 内側に生え、それが舌によって押しやられ前の方へ移動し、少しあとから生えて 来る上の前歯と噛み合うのです。なかには極端に内側に生えたために乳歯と永久 歯が2列に並んで生えている場合もあります。そのような場合、お母さんも、お 子さんも大変心配されて、慌てて来院されますが、乳歯を抜いてやれば、歯の生 えるスペースさえあればやはり舌によって前に押しやられ、きれいに並ぶのです。 現在、花の万博が催されチューリップが咲き誇っていますが、お宅のお子さんの チューリップちゃんはどうでしょうか。

以前に、上の前歯について、みにくいあひるの子の時代のことを書きましたが、 人の成長、発育にはいろいろなドラマがあり興味が尽きませんネ!