No.060 口腔衛生についての意識の向上を!!
先日、2つのお子さんを連れて、お母さんが虫歯ではないかと来院されました。 上の前歯の歯と歯肉の境目のあたりが白くなり一部が黄色くなっているという のです。
よく観察して見ると、上の前歯の歯頚部(歯と歯ぐきの境目)に白斑ができて いるのです。探針(歯の表面にできた穴などを診察するための針のような器具) で探って見るとほとんどの白斑部は表面がまだツルツルとしているのです。そし て、一、ニケ所だけ少し引っかかるところがあります。
最近のお母さん方は、日常よくお子さんの口の中を観察されているようで、昔 では検診の時にも虫歯と記録されないような小さな物まで見つけてくれます。今 回のように歯と歯肉の境目の白斑は虫歯の程度でいえばC。というものです。実 際これは学校検診などでは記録しない所のほうが多いようです。
ところで、昔から虫歯は他のほとんどの病気とは違って、一度かかったら絶対 に自然治癒はしないといわれてきたのですが、このC。という虫歯は歯の表面の エナメル質が壊れる一歩手前で、表面はまだツルツルしていて、この状態までの 虫歯は他の病気と同じように手入れさえ適切であればまた元の健全な歯に戻す ことができるのです。ですから、本当は、このC。の状態を虫歯と認識し、治療 (養生)をする事こそ、完全治癒のできない虫歯を食い止める最前線なのです。 これはとりも直さず、歯の表面にくっついた歯垢(歯くそ、プラーク)の発見と 認識、そしてそれを除去することなのです。すなわち、歯口清掃、ブラッシング、 フロッシングなのです。
この子の場合は、お母さんの要望もあって少し引っかかる小さな穴には、樹脂 (コンポジットレジン)を詰めて外見上はほとんど健全歯とは見分けのつかない ようにしました。そしてお母さんに治療をしたからといってこれまでと同じよう に乳酸菌飲料の飲みっぱなしではまたすぐにおなじようになりますよとお話し しました。 ところで、最近読んだことですが「歯の治療処置とは、永続包帯を することだ。痛みを除き、進行を止め、そして再感染を防止する。包帯を巻いて 使えるように機能を回復するのが治療処置、・・・その包帯が外れないように、 そしてまた横からバイ菌が入って悪くなるようなことのないように、水にも漬け ないし、汚いところにも・・そういう注意が患者の日常のケア・・そのセルフケ アを、いつ、どうやって、養成して確固たるものにしてゆくかが問題なのです。 その問題を引き受けることこそが、歯科臨床のありかただ・・・」と書いてあり ました。
私は、小児歯科臨床は、口腔衛生に対する意識の向上こそが課題だと思った次 第です。