No.063 最近の子供たち-その2-
先日、6歳の男の子が下の前歯が生えるスペースが足りないためにいがんで生 えてきたのが心配だとお母さんに連れられて来院されました。 お母さんの言う ことには、乳歯はきれいに並んでいたのに永久歯はこんな歯並びなのでちっとも 噛めないで困っていますと、いうことです。 私はその子の口の中を見せていた だいたのですが、やはりお母さんの言うとおり下の前歯が舌の方にいがんで重な って生えていました。これはまさに先月の”くりあー”に書いた顎骨の成長不足 による、顎の大きさと歯の大きさのアンバランスそのもののようです。この子の 場合は隣の歯を2本抜いてもまだスペースが足りないくらいです。ですから今回 抜いた乳歯のそのあとに生えてくる永久歯が出てくれば当然また生える場所は ない訳で、どこかにいがんでこざるを得ないのです。結局この子は永久歯が生え てくるごとに乳歯を抜かなければならないのです。その上最後は永久歯も何本か 減らして歯と顎のスベースの調整をしなければならないでしょう。実際こんな子 が最近本当に増えてきているのです。 その原因は何だと突き詰めればはっきり としたものは分かりませんが、やはり先月にも書いたように「毎日の食事でしっ かりと噛んで食べないために、顎の骨に対する刺激が少なく成長が悪くなったの だ」と考えるのがとりあえずは妥当な答えではないでしょうか。
ところで話はその子の事に戻りますが、口の中を観察しますと歯に歯垢がべっ とりでした、普通は歯磨きをしていなくても噛み合わせの部分はあまり汚れては いないものです。というのは食べ物を噛んで食べればそれだけで噛み合わせの部 分はきれいになるのです。その子は軟らかいものをあまり噛むこともなく飲み物 と一緒に流し込むように食事をしているのです。これでは顎の成長を促す刺激に はならないでしょう。当然唾液の分泌も悪いと思われます。それでなくても、最 近は普通の食事をしていてもいろいろなルートから食品添加物などあまり体に よくないものを知らず知らずのうちに食べているのです。なかには発癌性物質な ども少しずつ毎日口にしているようですが、これら種々の発癌物質も唾液に浸し ておくと、唾液成分中のペルオキシダーゼによって発癌作用が減少することが発 見されているのです。しっかり噛んで唾液と食べ物を充分まぜあわせて食べると いう毎日の習慣は食品添加物などの有害物質から自分の身を守る一番手っ取り 早い、合理的な方法でもあるのですが、しっかり噛んで食べないとそんな恩恵に もあずかれないのです。