先月の”くりあー”で、3歳の女の子の指しゃぶりが治ったお話しをしました。 その後すぐまた同じように初診で来られた女の子に指しゃぶりのお話しをした ところ、今までちっとも治らなかった指しゃぶりが治ったと感謝されました。お 母さんのお話しでは「先生のお話しを聞いてちゃんと指しゃぶりが止まりました。 この子は本当に意志の強い子です。それにひきかえパパはなかなかタバコがやめ られません。この子はパパよりも意志の強いおりこうさんです。」と褒めておら れましたが、何だか妙な感じでした。

そして今日、この原稿を書いている5月31日はWHOが定めた国際禁煙デー だとか・・・世の愛煙家には厳しい時代になってきました。

さて、ここで指しゃぶりに対する対応について私の考え方を少し整理しておき ます。

1乳時期(1歳まで)の指しゃぶりは、子供の発達にとってむしろ有意義だと 考えます。吸啜反射などお母さんのおっぱいを吸うという、生きるための行動の 延長線上の指しゃぶりと考えられます。吸うことから始まり食べ物を噛んで飲み 込むという行動は、本能的な行動から1歩進み、それ以降の時期の生きて行くた めに食べるという行動の発達過程にあると考えられるからです。

2幼児期前半(1~3歳まで)の指しゃぶりは乳時期の延長上にあり、特に問 題にする必要はないと思います。しかし、この時期には本当は、手は口の中に入 れるのではなく、その子の周りの子供たちと一緒に遊んだり、手を使って好きな おもちゃで遊んだりして、精神的、社会的発達の期待される時期なのです。その 子の生活環境にうまく適応できないことによるストレスや不満の一時的な解消 の手段としての指しゃぶりだとすると一考を要するかもしれません。

3幼児期後半(3~6歳)になると知的にも社会的にもぐんと発達してきます。 指しゃぶりがストレスや不満の解消の手段としての表われであればその原因の 解決が必要です。また、癖になってしまった指しゃぶりは歯並びや発音にまで悪 影響を及ぼします。指しゃぶりという赤ちゃんのような行為を自覚させ、またそ のために顎の骨がゆがみ、指にタコができている意味を理解させ、止めさせる必 要があります。

それにしてもタバコを止めよう止めようとしてもやめられない世のお父さん 方はこの時こそ子供の良き理解者になるのではないでしょうか。