No.094 注意したい子供の発音
先日、この四月に小学校に入学したばかりの男 の子を連れてお母さんが初診 で来られました。
お話しを聞いて見ると、どうも言葉がおかしいというのです。前々から少しは 気になってはいたのですがまだ幼児言葉が残っているのだと気にはしていなか ったようです。「せんせい」のことを「しぇんしぇい」というような言い方で、 どうも舌が十分まわらない舌足らずな言葉使いです。その子の舌がうまく動いて いないのではと口の中を覗いて見るとやはり原因はそこにあるようです。その子 は舌の下にある、水かきのようなもの(舌小帯といいます)が短くて舌の先が下 の前の歯の近くにくっ付いて、舌の運動が大幅に制限されているのです。舌を前 に突き出すように言いますと、舌の先が引っぱられてハート型になります。これ では舌の先を上あごに接触させて発音する音はうまく出せません。このような舌 小帯の異常の場合の発音障害は、このケースのサ行の他に、ラ行によく現われま す「ラジオ」を「ダジオ」といった具合に、そしてタ行のなかのチの発音をする ときにも起こります。
舌小帯が短い場合、生まれてすぐの場合は哺乳障害や摂食障害が起きることが あります。
舌小帯が短い場合のほとんどは簡単な手術で治すことができますからおとな しく治療を受けられるようになったら治してあげるとよいでしょう。とくにラ行 の発音が完成するのは6歳ごろですから、小学校へ上がるまでにはやっておくの がよいでしょう。
正しい発音ができない原因はこのほかにも非常にたくさんあります。日常の歯 科臨床では虫歯が原因で正しい発音ができなかった例が報告されていました。原 因は下の乳臼歯のむし歯のへりがギザギザのためにそれを避けるためにカ行のキ の発音がチに聞こえ、カキクケコを早口で言わせるとカチクチェコとなったとい うことです。