先日、7歳の男の子がお母さんに連れられて来院しました。この子はもう数ヵ 月も前から生え替わったばかりの上の永久歯の前歯が下の永久歯の前歯の内側 に生えて来て、反対になっているのです。

このような場合、そのかみ合わせのままほっておいて、隣の歯が生え、永久歯 列が完成してしまうと、確実に不正咬合になります。大きくなってから何とかし たいと思っても、その時にはもはや矯正治療が必要となるのです。たまたま定期 検診などで見つけて、直ぐに手をうてば助かるのです。このほかにも色々、助か るケ-スがあります。

このケ-スでは、私は、アイスのスティックか割りばしを上下の歯の間に入れ、 下の歯で押して上の歯を前に突き出すように指導しました。 私の考えでは、一 生懸命やってくれさえすれば、それ程苦労することなく治せる程度のものです。 人によっては非常に難しいケ-スもあるので素人が勝手な判断でやっては危険 です。この子の場合比較的簡単なはずなので頑張ってするように指導していたの です。しかし、もう数ヵ月もするのに一向に治りません。もう隣の歯も顔を出し て来ています。もうすぐタイムリミットです。お母さんに聞いてみると、言った 時だけ少しはするのですが、すぐに他の事に気が行って本当にしている時間はほ んのわずかとのことです。「先生、きつく言ってやって下さい。」と少々匙を投 げた様子です。もう何か月もやっているのですからお母さんの気持ちも分からぬ こともありません。そのまま放置していたらどうなるか、大きくなった時治そう と思えば必ず矯正治療しなければならなくなる境目にあるのです。

そこで私は、あまりお話したくない事ですがと、よそのお宅の子で、お母さん が、もしもがんばって治したらご褒美をあげると言ってやらせたら、あっという 間に治ってしまった例をお話しました。

普段、治療に来るのを嫌がる子供を連れて来るのに、お母さんが、嘘をついた り、物で釣ったりするのはよくないとお話している手前言いたくない事なのです があえてお話しました。そうしたらどうでしょうか、次の来院時にはきっちりと 治っているではありませんか。お母さんにお聞きすると、ご褒美がもらえるとい うことで本当に徹底的に歯を押していたとの事です。他の事をするにしてもきっ ちり押しながらしていたとの事です。お兄ちゃんがしているので弟までやりたい といって聞かないとの事です。

お宅の子も言うことを聞かせるのは簡単なものですネ!と冗談を言っておい

たのですが何か複雑な気持ちです。ご褒美の中味はさて、お宅では何にします か・・・。