No.099 さりげないお父さんの一言
先日、3歳の男の子がお母さんに連れられて来院しました。待合室で待ってい る間はおとなしくしていたのですが、診察室に入るやいなや、ギィギィするの、 ドリルするの、注射するのと矢継早に泣きべそをかいて訴えています。今回が初 めての歯科医院への来院とのことなのでこんなちいさな子供がこんなに訴える のは、よほどその子のお宅では歯科の治療は痛くて恐ろしいものとして、日常生 活の場で洗脳されていたものと思われます。実際、言うことをあまり聞かないと きなど、お医者さんで注射してもらいますよとか、あまり甘いものを食べ過ぎす ぎると虫歯になって、そのうち歯を抜かなければならないよ、痛いよ!!お母さ ん知りませんよ!!なんて言って、子供を脅していませんか。あるいはご自分の 歯の治療のとき歯科医院で本当に痛い目にあったなどと、知らず知らずのうちに お子さんに歯科医院は痛い、怖いとちいさな子供の心に刻み込んではいませんか。
さて、その子が来てからほんの数日の後、同じ3歳の男の子がやはりお母さん に連れられて初めて来院しました。診察室に入るときはお母さんから離れるのが いやでだいぶ後込みし、てこずらせていました。中に入っても何か不安そうにし ていました。口の中を見るために口を開けるようにいいますとなかなか開きませ ん。眼には涙があふれ少し泣いています。少してこずったのですが、その後、レ ントゲン写真を撮るので動いては駄目よ、泣いていたら泣き顔に写るよ、などと 言いながら撮影しました。何枚か撮っているうちにいつの間にか泣き止みおとな しくなっていました。お友達のことや、おもちゃのことなどこちらが聞けばきち んと受け答えしていました。そうこうしているうちにレントゲン写真の現像もで きお母さんを診察室に呼びお話しをしました、たいへんお利口にできていますよ というと、お母さんは、おこさんに「そう、上手にお写真撮れたの、お父さんが きのう歯医者さんに行って泣いていたら泣き顔のお写真がいつまでも残るので、 ええ顔して撮ってもらえよ!!といわれたもんねえ」とおっしゃいます。そう言 えばレントゲン写真を撮ると言ったときから急にお利口になったようです。お父 さんの一言が有難いことにその子が上手に治療を受けるようになるきっかけを 作り自信を付けたようです。
ほとんどのみなさん、おうちで歯医者さんに行ったらおとなしくするのですよ。 お利口するのですよ、とお約束をして来てくれるようですがなかなかうまく行か ないようです。もっと具体的で分かりやすい事をさりげなく言ってあげることで す、実行できればその子はそこでいっきに自信を付け、その上に褒めてあげれば
ますます自信を付け、思いも寄らないことまでできるようになるのです。