No.102 年末休日診療に出て
昨年の暮れ31日、私は年末の休日診療所の当番で出務しました。
毎年、年末は急患が多いと相場は決まっているのですが、当日は朝から雨模様 で少しは足が遠のくのではと思いながら出かけました。
しかし、予想に反し、朝からきっちりと患者さんが来ていました。それも来る 人来る人みんな歯茎を腫らせて、昨日は痛くて一睡もできなかったといった調子 です。最近、当院では歯肉や頬っペを大きく腫らせて来られる子供はめっきり少 なくなりメスを使うケースにはめったにお目にかかりません。しかし、この日ば かりは次から次と来られました。患者は痛くて大変かも知れませんが、久しぶり にメスを振るう方としては面白いほどです。
私にとっては、年に数度しかない大人の患者を診る貴重な日でもあるのです。 さて、その日に急患が十数名来られました、最高齢者は82歳の方でした。十年 程前までは、急患の半数以上は子供だったのですが、この日は一人も来ませんで した。本当に様変りです。ちなみに17歳が最年少でした。
その日の終わりの頃、4本も残根歯を持った22歳の大学生が来られ、応急処 置が済んだ時、そういえば今日は子供の患者が一人も来なかったなあと言うと、 どうしてですかと聞き返してきたので、最近は子供の口の中がめっきり良くなっ て、頬っぺを腫らす程ひどいむし歯の子はほとんどいなくなったからではと答え ると、歯医者はこれから大変ですねと、同情してくれるではありませんか。
私は、いやいや、君のように子供の頃の虫歯がひどかった年代の人達が、人生 80年時代、これから50年、60年と生き続けている間は歯で苦しむはずなの で、歯医者の仕事はしばらくはまだまだ大丈夫、と答えると苦笑いしていました。
実際、日本よりも虫歯の問題を2,30年も早くからクリアーしてきた北欧などの 福祉先進国では、小児歯科医は虫歯や歯茎の病気の予防、定期検診、歯並びの治 療と、より快適な健康生活を目指して活躍しています。もちろん虫歯の治療につ いても、虫歯が少なくなればそれだけ丁寧に治療できるので機能的にも審美的に もより良いものが求められます。この日本でも、今の子供たちが大きくなった時 にはそうなって欲しいものです。
今回の休日診療を通じて、今の子供たちよりも、子供の時代に虫歯がひどかっ たお父さん、お母さん方のほうが、これからしばらくの間大変だと感じた次第で す。もちろん、今年もお子さんの健康により一層の関心をお願いいたします。