No.118 ひどい歯肉炎を防ぐために
先日2歳の女の子が、歯茎が腫れ、少し血が出ていて、その上、痛がって何も食 べないとの事で来院しました。お口の中を覗く前に、これは潰瘍性の歯肉炎であ ることはほとんど間違いはなさそうです。というのは、少し近付けば、独特の臭 いがするからです。口を開けるのを嫌がるのをなだめすかして、やっとの思いで 覗いて見るとやはり紛れもなく潰瘍性歯肉炎です。この病気が起きるのはほとん どの場合その数日前に何日かかなりの熱に侵されているはずです。この子の場合 もやはりそうでした。数日間の熱で口の中の歯肉や粘膜が抵抗力を失い、弱って いる所に、普通のときはほとんど害もなく、感染することもなく、誰の口の中に も常在している細菌が、やおら頭をもたげるのです。気を付けないと兄弟にも感 染しますよと注意したのですが、きっちり数日後には、弟が同じ歯肉炎にかかっ てしまいました。
私たちの口の中には、何十種類もの細菌が常に存在しているのです。それらは、 普通はバランスよく拮抗しているのですが、周りの環境が変わるとそのバランス が崩れまた口の中の抵抗力が弱ると感染するのです。 ですから、熱が出て子供 が弱っているからといって、そんな時はかわいそうだから歯を磨くのは見合わせ ておこうという親心も分からなくはないのですが、そんなときこそ口の中をより 清潔に、保ってあげなければならないのです。
弱り目にたたり目、の諺にもあるように、私たちの体はそれを侵そうとしてい る外敵と拮抗しながら健康を維持しているのですから、そのバランスが少し崩れ ると、普段の健康への回復力が弱ければ、いつでも益々崩れていくのです。
これは、何も特別の細菌によって引き起こされるものではないのですから、体 の抵抗力を弱めるような原因となる疾患を早く取り除いてやることが肝要なの です。その上で、今回の歯肉を侵している原因の細菌を抗生剤などの薬の力で叩 かなければならないのです。 普段の健康習慣、清潔習慣が大切です。