No.119 小児顎関節症について
最近、顎を動かすと顎の関節の部分がコリコリ、ゴリゴリ音がして静かな雰囲 気で食事をしている時には、格好が悪いとか、痛くて食べられないという子がい たり、少し顎を動かすと痛くて食事ができなかったり、あるいは口が少ししか開 かないし、無理をして開こうとしても、まっすぐにスムースには開かず、変な形 にガクガクとしか開かないなどと訴える子供が結構います。これらは顎関節症と 呼ばれる病気です。
なかには、口がほんの少ししか開かず、少し力をいれると痛くてほとんど物が 噛めなくて、食べることができないので痩せ細り、偏頭痛がして物を考えること もできなくて、肉体的にも心理的にも疲れ果ててしまっているケースもあります。
こんなに重症なケースは稀ですが、最近では子供にもけっこう顎関節症が見ら れます。しかし、その病態については特に小児については未だ分からないことが ほとんどなのです。
先月、鹿児島市で日本小児歯科学会があり、そこで小児顎関節症についての講 演がありました。
顎の関節にはその動きをスムースにできるように関節円板といって関節の骨 と骨が擦れるのを防ぐ介在物があるのですが、それが前にずれたり、後ろにずれ たりして引っぱられては引き戻されてぎくしゃくしている時にコリコリ、ゴリゴ リ関節が音をたてるのです。円板が変形したり傷ついてうまく戻れなくなったり してしまうと関節も傷つき痛みが激しくなります。
こんな症例でもそのうちに自然に症状が軽くなり、障害がなくなるケースが結 構あるのです。
積極的に治す場合は、X線で関節の状態をよく調べ装置を入れたりします。
また、消炎鎮痛剤の投与、開口訓練、顎関節腔の洗浄、あるいは外科的療法な どいろんな処置があります。
小児歯科の領域から見た顎関 節症は、小児の発育過程における口腔機能獲得の不十分さから発症したものとす る考え方が妥当だと思われます。