No.120 子供の心をとらえる!!
先日、木曜日の休診日に家内の知り合いの人から電話がありました。3歳の女の子のお孫さん の歯の治療をしてほしいとのことです。
よく聞いてみると、3日後の日曜日には、ロサンゼルスへ帰るとのことです。アメリカ在住の 日本人家族です。
これまでに、アメリカでむし歯の治療のために歯科医院へ行ったのですが、泣いてできなかっ たとのことです。笑気麻酔で少しもうろうとした状態での治療も試みたけれども、うまく行かな かったようです。今度帰ったら全身麻酔下での治療をしなければならないとのことで、心配で途 方に暮れているらしいのです。アメリカ人の歯科医のお話しでは全身麻酔下での治療では、9 5%は大丈夫ですが、5%の危険性があるとのことです。
私は、とにかく一度その子を見せて下さいといいました。それにしても時間がありません。
初めからおとなしく治療ができる子供でも、初めて会ったその日にむし歯の処置をするのは難 しいのです。聞いた限りのお話しではかなり手こずらされそうです。
その次の日の朝、早速その子が来院しました。少々嫌がって抵抗して泣いていましたが、西 洋人に比べ東洋人の方が何となく好きなようです、とのお母さんの言葉を信じて見ることにしま した。アンパンマンが好きだということで。ぬいぐるみを持たせたりして、気をそらせながら、 口の中の検診をしました。相当ひどい状態と想像していたのですが、実際は、上の前歯の歯と歯 の間に小さなむし歯があるだけで、日本では、いや、私の診療所では、食べたものが詰まらない ように表面をスムースにして、歯ブラシが通り易くした後、フッ素を塗布して様子を見るように しています。そういえば、最近、前歯の治療を積極的に希望する人が増えてきていますが、アメ リカではもっと希望があるのかも知れません。
私は緊急処置が必要な、痛むむし歯があるのではと思っていたものですから、先ずはひと安心、 気楽にその子に接することができました。
少々はぐずっていたのですが、特にいやなことをされる訳でもないので、その子は少しずつお となしくなって来たので、お母さんを呼んで、今日は気分よく終わり、面倒ですが明日、もう一 度来ていただいて、その時には一気に治療をすることを伝えました。今日は本当におりこうによ くできましたと、しっかり褒めてあげて下さいと言って帰っていただきました。
果たして、土曜日は、前日のお褒めが効いたのか、機嫌よく来院しました。目的のむし歯の治 療も、それ程大きなものではないので痛みもなく、まあまあ簡単に治すことができました。特に 前の歯ですから見た目も奇麗になったと褒めてあげると、その気になって喜んでいました。
今回、子供の心を捉えることの難しさを改めて考えさせられました。