先日の休日診療所でのことです。28歳の女性が来られ、昨夜、歯肉からの出 血が止まらず眠れなかったとのことです。

今までに血が止まらなかったといった病気になったことがありますかと聞く とそんなことはなかったとのことです。

口の中を見ると特に変わったところは見当たりません。どこからの出血かとお 聞きすると、上額前歯内側の歯茎のところからとのことです。そういえば、上顎 中切歯の間の口蓋部歯肉の部分が少し赤く盛り上がっています。しかし、特に出 血している様子はありません。

よく聞いてみると、昨夜、出血がひどかったので、塩水でうがいをして、歯茎 が傷んでいるので軽くマッサージしたけれど、なかなか止まらず、かなりの出血 があったとのことです。

この人の場合、歯茎からの出血のきっかけは分からなかったのですが、その出 血に対する対処がよくなかったようです。このような出血に対しては、1回は口 をゆすいで、どこから血が出ているか、よく見て場所を確かめる必要があります が、もう血が止まったかどうかなど、何回もうがいをして確かめてはいけません。 確認した出血部位にガーゼかそれに代わるものを当てて、手できつく圧迫します。 手が疲れるようであれば、口を閉じて噛んで圧迫し続けるのです。5分そこらで もう止まったかなと確かめないことです。少なくとも15分から20分は我慢し て圧迫しておいてほしいです。これでほとんどの出血は止まります。その後は、 それほどきつく圧迫しなくてよいでしょう。そっと軽く押えておくと自然と止血 します。口の中の出血は、唾を出して確かめ続ければいつまでも止まらないでし ょう。唾の中に少し血が混じっているだけでも、出血がかなりあるように感じる ものです。その上、もう出血がないかと傷口を少し吸ったりするといくらでも新 たな出血が続きます。睡眠中にそんなことをすると出血量はそれ程でもなくても、 それこそ洗面器一杯の出血があった、などということになりかねません。

血が止まりにくい出血性の素因を持っている人とか、出血の原因となるような 炎症などの病巣がない、外傷などの場合は、このような方法でほとんどの場合は 止まります。そして、これは口の中だけでなく、ほかの部位の出血についても基 本は同じですから、子供が不意の事故で怪我をして出血した場合などに、いたず らに慌てたり、不安にかられたりすることなく、よく見て確実に対処できるよう 心得ておいてほしいものです。