私が診察しているときに、診療室に入って待っている小さなおこさんと、ふと 目があった時こちらからニコッ!とほほえみかけてあげると、はじめはキョトン としていますが、もう一度ニコッ!とすると、おもわずニコッ!とほほえみを返 してきます。本当にかわいい顔をしてニッコリしてくれます。これをミラーの法 則といいます。
これは、歯科について何も先入観を持っていない本当に小さな乳幼児の場合に は必ずニコッ!と反応が返ってきます。このほほえみは、周りの大人をひきつけ、 かわいいという愛情を誘い出し、保護してもらうための自然の与えたメッセージ なのです。赤ちゃんは周りにスマイルを送って一番よくほほえみ返しをしてくれ た人をお母さんと思う習性があるといわれています。
また、よほど恐怖心にさいなまれているとか、周りのことにはお構いなくとに かく泣きじゃくっているようなときは別ですが、そうでなく、おうちでお母さん と、今日はおりこうに頑張ってくると言って診療室に入って来ているような場合 は、ふとそのようにほほえみかけられれば、自分もほほえんでしまうのでしょう。 そうすることでグッと緊張がとれてリラックスします。その余韻が薄れかけたと き、さりげなくちょっと声をかけてやると一段と緊張がほぐれるようです。こう なれば、診察の順番が来たときには、かなり落ち着いてしまって、お利口に治療 ができるようになります。
ほほえむということは、相手に対して攻撃の意志のないことの表明であり、相 手はそれを見て防御姿勢を解いて安心して心を開くのです。 私たち小児歯科 医は、本当はこの時点でずっと子供のお相手ができればいやがられたり憎まれた りすることなくハッピーなのですが、実際はこれからが大変なのです。
しかし、このとき攻撃する相手がムシ歯菌であり、それによるムシ歯などを治 すのだ、あるいは治してもらうのだという連帯感、信頼感が持てればと苦心する のです。いくら泣いててこずらせた子でも、治療が終ってキョトンとして、帰り にはバイバイと、ニコッとしてくれると疲れが一遍に吹っ飛ぶのです。いやなイ メージの強い歯科治療ですが、スタッフ共々できるだけ明るく、笑顔に心がけた いと思います。
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