今年の6月に「歯と口のホームケアガイド」という歯科についての育児書が出 版されます。その中にスポーツドリンクや乳酸飲料とムシ歯についての項目があ りました。少し教科書風になりましたが参考になりますから引用しました。

スポーツドリンクはスポーツによる発汗によって失われた水分を速やかに補 給しますが、糖分の補給のためにブドウ糖などが加えられています。そのうえ、 pHが4前後と低いため(pH5.5以下で歯が溶け始めます)ムシ歯の誘発性が高 いのです。しかし、小児科で発熱、脱水症状がある時などに、赤ちゃん用イオン 飲料とともに、よく水分補給のために飲むように勧められます。そのため、特に 病気でもないのに、お母さんの中には、健康飲料というイメージが強く、ジュー スを飲むよりはいいのではと飲ませている方がおられます。だらだら飲ませてい ると、当然ムシ歯の原因になります。→→→習慣にならないように、病気が治れ ばすぐに止めましょう。体にいいと思って飲ませてムシ歯を作っていては何にも なりません。

乳酸飲料も胃腸の弱い子供のために、乳酸菌の補給になるということで飲ませ ているお母さんがいます。乳酸飲料とは1%程度の乳酸と多量の糖分を含んだ清 涼飲料水の一種です。当然、ムシ歯の大きな原因となります。これも、体にいい と思って飲ませているところに大きな問題があります。

小児科で100%のオレンジジュースが良いと奨められたということで、毎日 赤ちゃんに1リットルも飲ませていたお母さんがいました。ムシ歯はもちろん、赤ちゃ んのからだ中、真っ黄、黄でした。ものには限度があります。

私は、これを書いていて思ったのですが、私が小児歯科医になった昭和40年 代の終わり頃、日本では、育児用粉ミルクは全て庶糖が使われていたので、乳児 のムシ歯が非常に多かったのです。哺乳瓶ムシ歯といって特に上の前歯の歯と歯 茎の境目のムシ歯が特徴的だったのです。当時、小児歯科医を中心として粉ミル クの乳糖化を叫んだのですが、便が固くて処理がしやすいなどの理由で、企業か らも、小児科医からも、かたくなに反対されたのでした。それが育児によいのだ ということで。なんだか、今の血友病の非加熱製剤の問題と共通するところがあ るようにも思われます。

現在では庶糖を使っている粉ミルクはありません。