No.135 食中毒事件を教訓に
先日、定期検診に来院した小学生が診療室の片隅に置いてあったパネルを見 て、”アッ!O-157ャ!!”と興奮して声を上げました。
実は、虫歯の説明用に作った、虫歯菌(S.ミュ-タンス菌)の電子顕微鏡写真 だったのです。
その子が声を上げたのも無理はありません。いっけん、O-157にも見える 形をしていたからです。O-157は蚕の繭をもう少し細めにしたような形です。 この夏じゅう、テレビや新聞で毎日のように見た、憎き食中毒の原因菌です。今 年の夏は、結局、思う存分プールで泳ぐこともなく、みんなたいして日焼けもせ ずに終わり、あっという間にもう10月です。O-157の発生源も瞹昧なまま に終息宣言がなされました。それでもまだ、岩手あたりで感染者が出たというニ ュースがあり、まだまだ安心できません。
今年は大腸菌O-157による食中毒をきっかけに皆さんも細菌感染の恐ろ しさを思い知らされたことと思います。
この経験を無駄にしないようにしてほしいと私は思うのです。
そうです、今までに何度となく虫歯は虫歯菌による病気ですよと、虫歯菌の写 真を見せてはお話してきたのですが、ちっとも反応がなかったのです。しかし、 今度こそはほとんどの子が大きな関心を寄せているようです。虫歯菌はO-15 7に比べて中央が少しくびれた形をしています。ぜひともこの際虫歯菌の姿を見 ておいてほしいと思います。
そして、虫歯菌はみんなの口のなかに何億個も居て、砂糖が大好物で、酸を作 って歯を溶かすのです。ですから、砂糖をだらだら食べないことは、虫歯菌に餌 を与えないことですから虫歯菌を増やさないことにつながります。それと同時に、 口の中の虫歯菌の数を減らすことも考えてほしいのです。そうです、歯ブラシで 虫歯菌の塊である歯垢、プラークを掃除するのです。これを毎日毎日繰り返すこ と、歯磨き習慣をつけることが虫歯の原因を取り除く唯一の方法なのです。
もう一度よく思い出してください。O-157に感染しないようにみんな何を、 何のためにどれだけ我慢し努力したのかを。
今年の食中毒事件の経験を教訓にしてほしいと思います。