No.136 歯を傷つけないがキーワード -パート2-
”くりあー”No.131で今年の歯科検診について、昨年から導入されたCO(非 治療対象要観察むし歯):歯の表面が白く透けて見える白斑状態やエナメル質の 一部が少しざらざらしてきているが、手入れさえきちっとすればそのままの状態 を維持できそうな歯、の事について書きました。
COはあくまで初期むし歯で口の中の衛生状態が悪ければすぐに本格的なむ し歯に進みます。ですから、1以前はどうせ口の中は汚れたままであろうから、 大きくなる前に削って金属などで埋めておこうという考え方と、2最近の、初期 のむし歯をいかに再石灰化させて元の健康な状態に戻すかという考え方。の2つ がありますが、あなたはどちらを選びますか。という風に書きました。
そして今回、講演会に行って来たのですが、そこでは、検診の時、先の尖った 探針と言う器具を使って虫歯を診断すること自体が、極初期の虫歯で再石灰化の 可能性のある状態を崩すので使うべきでないと言うお話しだったのです。要は、 一旦虫歯になってしまうと、そこを削って治しても、虫歯ができる状況がそのま まであれば、またすぐ新たに虫歯ができ、同じように削って詰めるという繰り返 しで、結局歯が無くなるまで続くと言うのです。
検診のために、ほんの初期の虫歯を突ついて傷つけ、削って治療しなければな らなくしてしまって、泥沼にはまってはならないのです。
日本で昔から言われてきた早期発見、早期治療はむしろ、歯が無くなるのを助 長していることになるというのです。ですから早期発見、早期予防を心がける必 要があるのです。ここで言う早期発見の中味は、ゴロンと大きな穴があいた虫歯 とか、検診の器具を強く押し付けて虫歯を見つけるといった大ざっぱなものでは ないのです。強い照明下で歯と歯の間や、歯と歯肉の境目、噛み合わせの面の歯 の表面が白く見える所で、器具で触ると傷がつく程度の取り返しのつく、虫歯の 極初期の早期発見なのです。今では、フッ素を上手に用い、歯磨きなど生活習慣 を少し改善することによって虫歯を止めることができることは、多くの人によっ て実証済みなのです。私の診療室でも、探針によって、再石灰化可能な初期虫歯 を傷つけないように気をつけたいと思います。そういう方針が人生80年時代、 自分の歯で一生食べられる基礎になると考えます。