No.149 過剰な消毒、殺菌は避けよう
先日、あるお母さんから、歯磨きをして汚れた歯ブラシはどうして消毒したら 良いのでしょうか? と聞かれました。
私は、歯科医になる前から、歯ブラシは使った後、水で洗って、強く振って水 を切り、毛の部分を上にして、乾燥させるようにしておけばよいものと考え、そ のようにしてきました。
しかし、最近、歯ブラシにも、抗菌歯ブラシなるものが宣伝され、結構人気が あるとのことです。となれば、歯磨きして、歯垢で非常に汚れた歯ブラシをどの ようにして殺菌、消毒すればよいのかと考えるのも、当然かもしれません。
もちろん他人との共有はダメですが、家庭での保存法はそれで十分だと思いま す。
あまり感心しないのですが、診療室で、歯磨きしてもらう時、自分の歯ブラシ を持参していない子で、歯ブラシを買ってもらえない場合は、診療室用の歯ブラ シを用意していますが、消毒液できちっと消毒し、乾燥保存しています。
ところで、最近の抗菌グッズに代表される清潔志向は行き過ぎのようです。歯 磨きで口の中を奇麗にするのは、菌の数をぐんと減らして常在菌のバランスを整 える事であって、決して無菌状態にするのではありません。抗生物質などで毎日 歯磨きすれば、菌交代現象が起こって、とんでもない問題になります。
人の口の中には数十種類の細菌がバランスを保ちながら生息しているのです。 甘いものなどに片寄った食事をすると虫歯菌が増えてバランスを崩します。
いっぽう、腸内にもさまざまな種類の細菌がいて、腸内細菌叢を形作って、バ ランスを取りながら外部から侵入した菌と対抗しているのです。体力や免疫力が 弱いと、このバランスが崩れやすく、発症してしまうのです。
最近の日本人の「清潔志向」に由来する過剰で不必要な抗生物質や殺菌、消毒 剤、殺虫剤などの環境汚染は、子供たちの抵抗力、免疫力を弱める事になってい るのです。