2004年4月 No.183 親譲りの歯周疾患原因菌
先日,小児の歯周疾患についての講演を聞いて来ました。
みなさまも御存知のとおり,むし歯と並んで歯科の二大疾患の一つなのです。
最近は子どものむし歯の状態はかなり改善されて来ていますが,歯茎の疾患が目立ちます。
食べ物の軟食化と相まって,子どもの歯茎の状態を詳しく調べると非常に多くの子どもが何らかの症状を持っているようです。
もちろん重篤な歯周疾患は子どもには殆んど見ることはありません。
この歯周疾患もむし歯と同様にプラーク(歯こう)中の細菌によって起こる疾患なのです。しかし,細菌の一方的な攻撃によって起こるのではありません。
攻撃してくる細菌とその細菌にくっ付かれている歯茎の防御力の関係によって歯茎の疾患が起こり,進行するのです。その病巣の広がりによって歯茎に留まっているのが歯肉炎で,この状態の子どもが非常に多いのです。
これが歯を支えている歯根膜や歯槽骨にまでおよべば歯周炎と呼ばれます。
大橋小児歯科へ来られる子どもの中にはいくら指導しても毎回プラークがベットリという子も稀にはいるのですが,成人の場合ですとひどい歯周炎ということになるのですが,歯肉炎に留まっている場合が多いのです。
どうして子どもに歯周炎が起こりにくいのかというと,先ずは歯肉の炎症を起こしてからの年数がまだそれほど長くはない事。ある程度の年数が来れば,乳歯抜けてその部分の炎症はいったん収まり,永久歯に交換するからです。
歯と歯肉の溝がそれほど深くないので大人に比べてプラークが溜まりにくい.事もその理由のようです。
歯が抜けている間でも,咽頭,扁桃や舌に細菌は留まっているので安心はできません。もちろん,これら細菌は両親から移るのが殆どのようです。
強力なむし歯菌が子どもに移らないように親は自分のむし歯を治さなければならないのと同様,歯周疾患にも気をつけてほしいものです。