2008年5月 No.232 身近でも児童虐待が
児童虐待のニュースが連日のように流れていますが、私は深刻な問題だと認識してはいましたが、まさか自分の周りの人間とは関わりのないことのように思っていました。
ご存知の通り先日、高石市でも現実に2歳児が殺害されたのです。
まさかお子様をわざわざ小児歯科医院までお連れ頂いている当院の患児ではないとは思いつつスタッフは患者名簿を調べていました。
児童が殺害されるほんの数日前に新聞の社説に「虐待防止 自治体は何をしている」と自治体の子どもを守り抜く取り組みが鈍いと大きく出ていた矢先の事です。
私は10年程以前に院内新聞に次のような記事を書いていました。
「保育所の歯科健診のあと先生との健診結果などについてのお話で、わたしが虫歯は勝手にできるのでは無くて、原因があって虫歯という結果があるのであって、虫歯のひどい児童を見て思い当たることがあるのではと水を向けると、保母さんがぴったり当っていると頷いておられました。本当に虫歯のひどい子は、手
の付けられない問題児が多く、お母さんも手を焼いておられるようだとのことでした。・・・」
その頃、表面上問題は子どもの方にあるように認識していたようですが、その根には親の何らかの養育放棄または怠慢(①適切な衣食住の世話を放棄、②病気なのに医師に見せない,③乳幼児を家に残したまま度々外出,④乳幼児を車の中に放置、⑤家に閉じ込める)があり、その結果むし歯のひどい問題児が育ったと
薄々分かっていたのです。
従来、私は子どもの生活環境とむし歯の関係を統計学的に明らかにすることを研究して来ました。むし歯をはじめ口腔衛生状況は育児がうまく行っているかいないかの大きなめやすになるのではと言ってきたのです。
養育の放棄・怠慢という児童虐待があれば当然重症の虫歯が発生するのは明らかです。
この“くりあー”5月号で、劣悪な口腔状態は児童虐待を見つけ出す目安になるという東京都歯科医師会の報告を紹介したところです。
平成16年改正児童虐待防止法で、歯科医は1歳半児健診、3歳半児健診、就学前健診などの公的な歯科健診時などあるいは普通の診察時に被虐待児をきちっと見極め、報告する義務が課せられました。
小児歯科医は特に子どもを守るためにも、より一層の見る目を養う必要があります。
-院長-