2012年12月 No.329 再生医療で注目される歯髄細胞
京都大学の山中伸弥教授が皮膚の細胞から作れる万能細胞=iPS細胞の発見で、ノーベル医学生理学賞を受賞されました。
先日患者さんのお母さんから、この子たちは再生医療が受けられるからいいですねとお話しされました。そうですねーと答えたものの、どうでしょうか?
山中教授も受賞の記者会見で言っていましたが、現時点では実際の患者に対して何も役に立っていないので、早くお役に立てたいとのことでした。
素晴らしい可能性がある大発見ですが未知の世界です。
そんな矢先、歯髄細胞からの幹細胞が注目され、歯髄細胞バンク登録の誘いが届きました。
歯髄細胞は、歯という硬組織に保護されているため紫外線や放射線を通さず、内部の酸素濃度も低いため遺伝子に傷をつける物質ができにくいまるでタイムカプセルのような構造をしています。そのため、歯髄に含まれる幹細胞はいつまでも若々しい状態で保存されているのだと考えられています。
抜去した歯に含まれる歯髄細胞が再生医療の早期実現に極めて理想的な細胞であることに着目し検証を重ねて来た結果、歯髄細胞は乳歯や永久歯ともに細胞の増殖能が高く、短期間の培養で多くの歯髄細胞を得ることが出来、細胞の老化に与える影響も少なく染色体も正常に維持されていることが明らかとなったというのです。
歯髄細胞はこれまで医療廃棄物として処理されてきた親知らずや乳歯などの抜去歯から採取可能であることから収集し易く、培養方法および保存方法が確立されている点において、これまでの再生医療に関わる諸問題点を解決する理想的な移植 細胞ソースであるというのです。歯髄細胞バンクが構築出来れば、再生医療 の具現化がさらに加速するでしょう。
-院長ー