2015年2月 No.355 小児歯科は魔法使いではありません
先日当院に初めてという方からの電話がありました。他の一般歯科に3歳の子どものむし歯治療で受診したのですが、泣いて、暴れてその医院では治療ができないと云われ、小児歯科専門医で診て貰ったらということで電話をしたということです。
受付が対応したのですが、どうも初診でその日のうちに一回でむし歯の処置をしてほしいとのことのようで、話がこじれていたのです。
話がかみあわないのか、私に電話が回ってきました。
よく聞いてみると、どうもそのお母さんは小児歯科専門医だから泣いている子でもその日のうちに治療を終わらせることくらいできて当たり前とでもいうことです。
私は確かに小児歯科専門医ですが、魔法使いのように泣く子を、それも初めての子を泣き止ませてその日のうちに治療を完了させられますとはとても言えません。泣いていようが急を要する処置が必要な場合は何としても緊急処置はやりますが、その日で終わりとはいきません。
確かに子どもをコントロールする手法がいくつもあって、それを駆使して治療に当たっていて、たまたまぴたりと泣き止ませることができることがあって、びっくりさせるようなことが度々あるのですが保証はできません。
結局その方はどこかいい先生でも見つけられたのか、無断キャンセルで無しのつぶてでした。
子どものむし歯は、その昔、いや、ほんの少し以前まではどうしても防ぎきれないものと考えられてきました。それが現在ではむし歯のない子どもが多くなり、重症のむし歯の子が珍しいくらいになりました。それこそ歯についての子どもの食を中心とした生活習慣が改善され、魔法をかけたようにむし歯は少なくなりました。
泣いている子どもをぴたりと泣き止ませお利口にすることはまだまだ解決ができない永遠のテーマです。ただ泣き止まないだけの理由で全身麻酔をという乱暴な解決方法はどんなものでしょうか。
ー院長-