先日、6歳の男の子がお母さんに連れられてムシ歯が気になるからと初めて来 院しました。初めての学校検診で小さなムシ歯があるとのことです。このムシ歯 は簡単に治すことができ、それほど問題はありません。
小学1年生でまだまだ幼い子供ですが、顔を見ると唇が上のほうにピンと縮み 上がり、赤ちゃんの口元のようで、本当に幼く見えます。歯を噛み合わせるよう に言っても前の歯は開いている、開口と言う状態です。指しゃぶりでもあるので はないかとお母さんにお聞きすると、指しゃぶりはないとのことです。しかし何 らかの力が掛らなければこんなことにはならないはずだと、もう少し突っ込んで お聞きすると、やはり原因がはっきりしてきました。それは小さい頃からいつも 口が開いていて、口で息をしている、口呼吸がどうもその犯人のようなのです。
以前、この”くりあー”に息でも歯は動く、というテーマで書いたことがあり ました。口呼吸をしていると、食べ物を飲み込む時や、お話しをしている時に舌 で前歯を押し出すようになり、息だけよりももっと大きな力となって働き、開口、 出っ歯の原因となります。また、いくらお利口な子でも、口を開ける癖がついて しまうと、どう見ても締まりのない表情にもなってしまいます。
私は以前、このような子供を見たとき、お口で息をするのは、わんちゃん(犬) だけですよ、あなたは人間だからお鼻で息をスウスウしなさいと言ってきたので すが、どうも口で息をする哺乳動物は人間だけのようです。もともと人間は猿と 同じで鼻呼吸でした。それがなぜ口で息ができるようになったかといえば、言葉 をしゃべられるようになったために、声門のある喉頭が、声の出しやすい位置に まで鼻腔から遠ざかり、その結果、気道と食道が交差するようになり、口からの 呼吸もできるようになったと言うことです。犬がハアハアするのは、犬には汗腺 がないので、息を吐いて体温を下げているのであって、息を吸うのは鼻からだと いうことです。
鼻は、汚れた空気が入ってきてもいいように鼻の内側は微細な毛を持った粘膜 で覆われていて、ほこりや雑菌は除かれ、湿気も与えられるので、鼻から入った 空気は喉を痛めないのです。
言語の獲得と引き換えに、口呼吸という生物としては不自然な呼吸を身につけ た人間は、おかげでさまざまな病気を背負い込むことになるというのです。 現 在口呼吸の人は、先ずは、本来の鼻呼吸を心がけたいものです。 -つづ く-
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