先月号で私自身の歯科治療のことを書きました。付き添いのお母さん方の中に も歯で困っておられる方が多いものと見えて、どこか良い大人の歯科医院を紹介 してほしいなどと反響がありました。 さて、私の歯の治療を受けた時のことで すが、待合室で待っている間の時間の長いこと、たったの10分位でも長く感じ るものですネ!!私の診療所では、時間の予約制をとっているので、できるだけ 時間通りにできるようにしなければと思いました。

そして、本番の歯の治療です。麻酔の注射はやはりいやなものです。刺入点の 痛さはさほど大したものではないのですが、やはり気持ちの良いものではありま せん。私はこの注射針の刺入には歯科医になって以来この15年間苦労し、工夫 を重ねてきました。いかに子供に苦痛を与えずに治療をするかなのです。刺入点 に先ず表面麻酔の軟膏を貼付したり、唇を少し引っぱったりして注意をそちらに 向けている間にごく微量の麻酔薬を粘膜に注入し、しばらくしてしてから必要量 の麻酔薬をうちます。いろいろな工夫の結果、現在のやり方になっているのです。 今では本当はほとんどいたくない筈です。刺入時の痛みは心理的な要因が大きい ようです。ですから、いかに素早く処置してしまうかということも大切なのです。 麻酔さえかかれば、もう痛みはないのですから安心な筈です。しかし、実際には 麻酔によるしびれ感は何とも気持ちの悪いもので、子供たちがよく辛抱してくれ ているなあと思います。治療中私の場合は、今、どんな処置をしているのか分か っているのですから、他の人に比べれば不安は少ない筈ですが、やはり恐ろしい ものです。キーンと削るタービンの音、そしてエンジンの音それらは普段聞きな れているのですが歯から骨を伝って聞こえて来る音とは段違いです。薬のにおい、 味、みんないやなものばかりです。それよりも、なによりも、いつ終わるのかと いう不安が最も嫌なものです。自分ではどうすることもできない立場を強いられ るのは本当に苦痛です。子供の治療の場合、よく、1~5まで数えれば一休みし ますとか、あとどれだけすれば終わりですョ!とか、こまめに途中経過を話して やるなど普段の治療にもひと工夫しているのです。治療の基本としてtel(l お話し)、 show(見せて)、do(処置する)を心がけているのですが3歳以下の子供について はそれすらなかなかできないのが現実です。これが子供の歯科治療の難しさであ り、また、それを克服して行く事がやりがいでもあるのです。