No.030 歯の萌出期の歯肉炎
先日、6歳の男の子が「下顎の奥の歯肉が腫れて、熱もあるし、痛くて一晩中 眠れませんでした。」と急患として来院されました。あまり開かないお口を開け て、よく見せてもらいました。すると、一番奥の歯のその奥の歯肉が真っ赤に腫 れて、膿をもっています。見るからに痛そうです。お母さんは何かこわい病気で はないかと心配げです。これは萌出性の冠周囲炎です。お母さん方の中には親知 らずが萌えてきた時にその周りの歯ぐきが腫れて苦しめられた思い出のある方 たくさんおられると思います。新しい歯が萌えてくる時に歯肉を突き破って出て くるのですが、親知らずが生えて来たのに十分な余地がなかったり、いがんで生 えてきた時にはそこに炎症が起きるのです。
この子の場合は、第一大臼歯(6歳大臼歯)が突き出してきて、歯肉が盛り上 がり、噛み合う相手の歯が当たって歯肉を傷つけて、膿んでいたのです。こんな 場合は、傷ついた歯肉を電気メスできれいに取り除いてやれば原因が無くなるの ですからすぐに治ります。
同じ様な原理で起きる歯肉の炎症は他にもたくさんあります。その一つに生後 半年ぐらいの赤ちゃんの口の中に新しい歯が萌えて来る時、歯肉の中から歯がニ ョキ,ニョキ竹の子のように出てくる時に、それがあまり急激なので周りの血管 が破れて内出血を起こします。萌出性の血腫で歯肉が紫色に盛り上がります。そ れにばい菌が感染することもあります。このように、新しい歯が生えるためには いろいろな生涯をクリアーしなければならないのです。