先日、小児歯科と8020運動というタイトルで座談会があり出席しました。 8020運動については今までに何回かお話ししてきましたのでもうご存じだ と思いますが、「人生80年時代80歳になっても自分の歯を20本は維持して、 一生涯自分の歯で噛めるようにしよう。」という運動です。

従来、子供のムシ歯予防などを訴え続けてきた私ども小児歯科医は、歯が生え はじめてから、ほとんど大人の歯に生えかわってしまうまでの口の中の健康管理 をして来ました。これはとりもなおさず、その後の一生の口の中の健康を考えて のことではあったのですが、やはり小児歯科医の守備範囲は子供のうちだけとい う感があったように思います。 今回、私たち小児歯科医が積極的に提案し たのではないのが残念ですが、成人歯科保健対策として出された8020運動に よって、形の上で小児期から成人そして老年期まで、一生涯にわたっての口腔保 健の輪がつながったのです。

もちろん、8020運動だから80歳で20本の歯さえ残っていればいいと言 うのではなく、その歯を使って何でも美味しく食べ、健康でより豊かな人生が送 れるということです。

歯が揃っていて何でも美味しく食べられるということは、当然会話もはずみ心 に余裕ができ、つまらないことでくよくよしたりしないで、楽しい毎日を送って いるということです。

それもこれも、やはり美味しいものをよく噛んで食べることによって口の周り の筋肉を使い、そのことによって脳への血液の循環もよくなり、最近よく話題に なっているボケ老人になるのを防いでくれるのではないでしょうか。

8020の目標を達成するためには、乳幼児期をその出発点と位置付け、この 時期からよい歯でよく噛み健康的な毎日を送る習慣をつけてしまうことが大切 ではないでしょうか。

歯は一旦ムシ歯になったら、何か詰め物でもして治療はできても、元に戻るこ とはありません。ましてや抜けてしまった歯はどうしようもないのです。 いま までの1本ぐらいは歯がなくなってもと言う考えはこの際きっぱりやめてほし いものです。

あなたの体のなかで、歯以外に無くなってもあまり気にしないものがあるでし ょうか。