No.131 歯を傷つけないがキーワード
今年も健康診査の季節がやって来ました。私も幼稚園、保育所などの園医をし ていますから、この季節は他の色々なこともあって大忙しです。
しかし、ふだん診療所で見ているお子さんが検診に行った先の幼稚園などで見 かけた時、知っている先生だけに他の子より何となく自信あり気で溌剌と見えま す。また、お友達と仲よく元気にしている様子を見ると私のほうも何とも言えな い、いい気分になります。
さて、歯科検診についてですが、昨年から導入されたCO(非治療対象要観察 むし歯)の事が気になります。
先月号の”くりあー”に「健康教室」という雑誌の記事を拝借してCOについ て少し書きましたが、そこには「これはむし歯になりそうな歯のことで、特に歯 医者さんでの治療は必要なく、このまま経過観察します。」となっています。
このまま経過観察します、ということは、あたかもこのまま本格的なむし歯に なるのを観察することにはなりはしないかと心配です。
COはあくまで初期むし歯で口の中の衛生状態が悪ければすぐに本格的なむ し歯に進みます。ですから、以前はどうせ口の中は汚れたままであろうから、大 きくなる前に削って金属などで埋めておこうということになったのです。
しかし、最近では、初期のむし歯をいかに再石灰化させて元の健康な状態に戻 すかというようになってきているのです。
あなたはこの考え方のどちらのほうを選びますか。
私は新しい考えかたの方を選んでほしいのですが、それには積極的な歯磨きや フロスを実行することと、間食のだらだら喰いはしないなどが前提条件です。そ の上にもっと積極的に再石灰化を促すためにフッ素塗布やフッ素洗口などフッ 素の利用を進めることによって可能になるのです。
昔は、むし歯になりやすいかみ合わせの深い溝や歯と歯の間の歯ブラシの毛が 届かないような不潔域はどうせむし歯が進むので予防拡大だ、予防充填だと、ど んどん歯を削る方向で治療するのが良心的な良い治療だと考えられた時期もあ ったのです。私もその様に習って歯科医になったのです。
また実際、今でもそのように考え実行している歯科医もいます。 人生80年 時代、一生自分の歯で何でも噛んで食べられるように、できるだけ歯を傷つけな いようにすることが、子供の時期からのキーワードだと私は考えます。