No.143 手を抜かないで子供の歯科医療
先月の22日は私が所属している全国小児歯科開業医会の全国集会がそして、 23日、24日は日本小児歯科学会が東京の副都心、ビッグサイトで開催され、 出席してきました。東京人自慢の未来都市だけあって超近代建築が立ち並んで目 を見張るばかりでした。私も一度は見ておきたいと思っていたのでした。しかし、 人が多くて交通が渋滞して折角のいい気分も台なしでした。
さて、肝心の学会の方ですが、最近では、子供の虫歯が減ってしまって、本当 に影が薄くなって、あまり問題にされなくなってきています。 それこそ、いま だに虫歯で苦しんでいる人は時代遅れのような存在になりつつあります。でも、 昔のようなひどい虫歯は見られなくなりましたが、やはり、日本の子供の病気の 中では飛び抜けて多いことには変わりはありません。
でも、子供の虫歯が減ったこと、生まれてくる子供の数が減ったことははっき りと数字となって現われてきています。
日本の総医療費の9%が歯科医療費です。その歯科医療費の9%が0歳から1 4歳までの年少者に使われているのです。すなわち、全医療費の1%にも満たな い部分が、私が対象としている小児歯科医療なのです。 それが、最近老人の割 合が増えたのとは対照的に、減って困った、困ったといわれている年少者で、全 人口の約15%を占めているのです。全医療費の1%以下で全人口の15%の子 供たちの歯科医療費を賄っていて、おそらく、この部分だけがこの10年以上も の間医療費が増えずにうまくいっている唯一の分野なのです。
ところが、皆様ももうご存じだと思いますが、保険財政赤字を埋め合わせるた めに、子供の虫歯の問題はもう解決したということで、子供の歯科医療への支出 を削って老人へ回そうとしているのです。
私は、折角うまくいっている子供の歯科医療なのですから、財政的に少なくて 済んだ部分はもう少し年齢を上げて、うまくいっている年齢範囲を徐々に広げて いくことが最も現実的な医療費削減につながっていくと考えます。子供の虫歯が 減ったからと、少し手を抜くと、すぐに元の目網、虫歯はまたぞろ増えること請 け合いです。