2007年12月 No.227 むし歯学の近未来
5月20、21日と福岡で日本小児歯科学会があり、出席しました。 カリオロジー(むし歯学)の近未来、という演題のシンポジウムがありました。 これからのむし歯学はどうなってゆくのかという事で、興味があったのでじっくり
聴きました。 皆さまもご存知だと思いますが、むし歯はもう既に病因論は解明されてしまったと
考えられています。 ですから学問上ではむし歯にならないようにすることは可能であり、実際そのよう
にしてむし歯を作らない実例が数多く発表されています。 では、この世の中にむし歯はなくなってしまうのかというとそれは違います。 分かってはいるのですが、日常生活の健康習慣、食習慣を理屈通りにコントロール
できないのが普通の一般市民です。 少しくらいずぼらをしてもそれ程ひどいむし歯にならないようになればいいのに
ということになります。 そのためには、病因論に基づくリスクの排除と、再石灰化で知られている口腔、唾
液に備わる歯質の自発的治癒機構を促すことです。 発表の中に虫歯予防における早期むし歯診断法が紹介されていました。蛍光を当て
て初期むし歯を検出する方法です。これはなにも大げさな器械を用いなくても歯の白 斑として日常簡便に知ることができるのです。
1歯質のフッ素化によって、耐酸性を増して溶解しにくくすること。 2わずかに溶解した歯質を再石灰化させる。 フッ素のこれら二つの作用を積極的に活用するのが現実的でしょう。 先月この“くりあー”でひどいむし歯は児童虐待を疑う大きな指標になると書きま
した。未だに重症のむし歯が社会的な問題になっている一方、これからもむし歯対策 は穴が開き、痛くなってからではなく、本当の初期むし歯で再石灰化して元の健康な 歯に戻すようにするという、むし歯対策が具体的に推し進められているのです。 -院長-