2010年8月 No.299 注目される乳歯歯髄の幹細胞
注目される乳歯歯髄の幹細胞
5月19~20日日本小児歯科学会が名古屋国際会議場で開催され、その日は休診にして私も参加しました。
日本全国から小児歯科医が集まる学会での発表内容は歯科の基礎医学から臨床まで本当に幅の広いものです。そして、最近ではむし歯についての研究発表は本当に少なくなり、子どもの歯肉炎、歯周疾患、小児矯正、そして顎関節症などの研究発表が増えてきています。それほど子どものむし歯は減ってしまったのです。
特に目立つ研究はやはり幹細胞の分野です。それにまつわるさまざまな研究がなされていました。最近では動物実験の段階で実現した結果を人に応用する段階にまで研究は進んで来ています。
特に乳歯の歯髄にある幹細胞が注目されています。①乳歯の歯髄は硬い歯冠に包まれていて紫外線などさまざまな外部からの刺激から隔離されていること、②人の器官の中で原始的な状態で維持されてきたこと、③新たに永久歯にとって代わるので合理的に手に入れやすいことなど色んな条件に恵まれているようです。
現実に乳歯の抜去歯を処理して一箇所に集めて利用する組織ができ、実行に移されています。私の診療所では未だですが、そのうち乳歯の抜去歯を“チュウチュウ”(ねずみのおもちゃ)に入れてお持ち帰りいただいているやり方から家族の誰かの病気治療のために使われる日が来るかもしれません。
動物実験の段階ですが、歯髄が死んで空洞になってしまったところに幹細胞を入れて新たに歯髄が再生され、その周りには象牙芽細胞が取り囲むようにさいせいされたスライドが映し出されていました。それよりもあごの組織に新しい歯を再生させた実験も成功しています。これまで屋根の上や縁の下に捨てられていた乳歯が注目されているのです。
-院長-